写真を撮りたくなるレンズ。
初めて買ったカメラは、もう10年近く前になるけど、フィルムカメラのEOSkissのレンズキットが新古品みたいな感じで出ていたのを勧められるがままに買ったものだった。
その時は、絞りだとかシャッタースピードだとかISOだとかさえ知らなくて、キットになっていた標準ズームレンズでただただ綺麗に撮れることに満足してた。
それからしばらくして買ったのが、キャノンユーザーなら誰もが使うであろう50mm f1.8。
めちゃ安いし、めちゃ軽いのに、写りはすごく良くて、ずいぶんと長いと使っていたような気がする。当時、特に不満らしい不満はなかったけど、やっぱりどうしても他のレンズも使ってみたくて、新宿のビッグカメラに行ったら、シグマの50mmf1.4を激烈に勧められたので、これまた勧められるがままに買った。
このレンズはすごくすごく重たかったけど、写りは本当に素敵で、解放から何のためらいもなく使っていた。
当時は解放の描写と絞った時の描写の違いをそんなに意識できていたわけでもなかったし、解放でとって、背景を浮かして被写体を浮かび上がらせるようなポートレートを撮りたくて仕方がなかったころだったので、ぴったりとはまったのかもしれない。
とにかくよく使った。
ものすごく重かったけど、レンズが大きくて、造りもしっかりしていたから、持っているだけでいい写真が撮れるようなわくわくするレンズだった。ただ、当時はEOS-1vに付けて使っていたこともあって、トータルではかなりの重量になってしまい、少しずつ出番が減っていった。
それと入れ替わるようにして使うようになったのが、ニコンの50mm f1.4とPlanar50mmf1.4だったと思う。これはF3につけて使っていたのだけど、フィルムを一番使ったのはこの2本のレンズだったかもしれない。
シグマのレンズと比べて写りはどれほど違うのかと言われると、僕にはうまく説明できるほどその違いを認識できていたわけではなかった。
後から撮った写真を見返していると、シグマのレンズで撮った写真にも好きなものがたくさんあったわけで、どれが優れていて、どれが劣っているというような認識はまったく持っていなかった。
それでも使用頻度に差が出たのは、結局のところ重さと気分でしかないような気がしてならない。身も蓋もないような話ではあるのだけど。
いいレンズとは、よく解像して、ボケが綺麗で、収差が出なくて…というような条件を挙げられることが多いと思うのだけど、それだけじゃなくて、大きさ、重さ、デザイン、使い勝手、コストというような側面もある。
そして、このレンズで撮りたいなという気持ちになれるか。
中村教室に通い始めて、写真の勉強をしていたころは、物ばかり撮っていたし、「何を撮るのか、何故それを撮るのか」みたいなことばっかり考えていたから、機材のことなんてほとんど考えなかった。それ以前の状態だったのかもしれない。
ただ、子供が生まれて、家族写真を撮る機会が圧倒的に増えてくる中で、本当になんとなくではあるのだけど、「どうせ撮るならこのカメラで、このレンズで撮りたいな」と感じる場面が出てくるようになった。
こんなことは気分以外の何物でもないのだろうけど、僕がF3を手放した理由としては、このあたりの理由が大きい。
ファインダーも見やすかったし、巻き上げの感触も気持ちよかったし、丈夫で信頼できるカメラだったし、レンズもよく写るものだったから、機材としては申し分なかった。今でも使いたくなることがある。でも、どうも肩に力が入ってしまうような違和感が少しずつ大きくなって、結果的にPENTAXのカメラとレンズに今は落ち着いている。
使いたくなるレンズというのは、結局のところ、これまでそのレンズを使ってきた印象の積み重ねの結果によるところが大きいのだと思う。
頭の中できちんと整理できているわけではないけど、そのレンズを使ったらどういう写真が撮れたのかということは自分の潜在意識の中に確実に刻み込まれているので、撮りたい写真のイメージが明確であればあるほど、使いたいレンズは明確になる。
でも、レンズの描写だけじゃなくて、レンズそのもののデザインや質感だったり、マニュアルフォーカスの感触、ファインダーを覗いた時の見え方というのも大事。すごく。
今はsmc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limitedとsmc PENTAX-DA 35mm F2.8 Macro Limitedのどちらかを使うことが多いのだけど、写りだけではなくて、小さくて、単焦点で、レンズそのものの造りも素敵なところが、やっぱり好きなのだと思う。このレンズを使って写真を撮りたいなぁという気持ちになる。
写りはもちろん重要なのだけど、レンズに対する親近感や愛着といったものは写りそのものというよりは、写りや外観全てを含めたデザインから感じとるものだと思う。
手持ちの数少ないレンズの中でも結局は上の2つをよく使っているのは、その全体としてのデザインが好きだから、僕がこのデザインに共感するからだと思う。
だから、使っていて楽しいし、また使いたくなる。
あぁ、本当はsmc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limitedの感想を書こうと思っていたのにすっかり脱線してしまった…。
感想はまた改めて…。
ライカのレンズって、使ってみたらどんな気持ちになるのかなぁ…。
2 Comments
bassdive
2015年7月17日こんにちは。
カメラ遍歴が私とけっこう似ていて嬉しくなりました♪
私も10年前に中古の1Vを購入し一眼デビューしました。
レンズは最初はズームでしたが、EF50mmF1.8iiからEF50mmF1.4へ。
そしてNikonに移ってMakroPlanar50/2です(^_^;)
話が逸れました…。
M2を使用してのLeicaレンズの感想を少し…。
Leicaのレンズは、やはり他とは違う唯一無二の表現だと思います。
コッテリ系のZeissとはまた全然違ってフワッと浮き上がってきて、
なおかつピント面の存在感がすごくて…言葉でうまく表現できませんが(^_^;)
舞台の上でスポットライトが当たっているかのような感じでしょうか。
雰囲気的には、Pentax67+105mmF2.4の写りに近いものを感じることもあります。
ただ、今まで一眼レフでファインダーから見る景色にこだわってきた人には、
レンジファインダーはかなり抵抗があると思います…。
逆に、MFでのピント合わせは圧倒的にRFのほうが速いと思います。
二重像合致式の利便性、リングをまわす感触、シャッターフィーリングなど、
操作性としては最高に気持ちよく、速写に向いたカメラだと思います。
小さいのでフットワークも抜群です。寄れないことだけが難点…。
それぞれに一長一短があって、これ1つに絞る、というのはなかなか難しいですね。
すみません、長々と失礼しました。
YOYO1981
2015年7月18日>>bassdiveさん
やっぱりライカのレンズって他のものとは違う何かがあるんですね…。スポットライトがあたっているような感じかぁ…。
でも、あの値段を見ると、自分は写りの違いを見出せるのか不安もあってなかなか手を出すのは少し勇気がいりますね…。
気になり続ける存在ではあるのでいつかは使ってみたいですが…!
あれもこれもというわけにはいかないですけど、どれか一つに絞るというのはむずかしいところですよね。
その時々に応じでうまく使い分けられるようになりたいところです!