フィルム写真っぽさってなんだろう。

写真を始めたのがフィルムからであろうと、デジタルからであろうと、フィルムで撮った写真の感じが好きだという人はたくさんいると思う。
フィルム写真が好きで写真を始めたから、デジタル全盛の今でもやっぱりフィルムが好きという人もいるだろうし、デジタルカメラで写真を始めたけど、フィルムを使ってみたら新鮮ですごく良かった、という人など理由は様々なんだろうけど。

僕は写真を始めてからしばらくはフィルムだったので、今でも「写真」というとフィルム写真のイメージが強くある。
だから、デジタルカメラが出始めた当初は、カリッとした感じというか、カクカクした感じというか、階調性がなだらかでないというか、一目でデジタルカメラの写真とわかる雰囲気に馴染めなくてずーっとフィルムを使い続けていた。

でも、最近は「あー、デジタルっぽいなー」と感じることはほとんどなくなったし、下手するとフィルムで撮った写真でも、「なんかデジタルっぽいな…」って感じることすらある。
それに、写真を撮るにあたって大事なことはデジタルかフィルムかということだけではなくて、もっと他に大切なことがあるなーと思うようになってからは、そこまで気にならなくなったというのもあるかもしれない。

 

それでも、今でもフィルムを使い続ける人がたくさんいるし、デジタル現像する際にもフィルムの質感に近づけられるように仕上げるツールがあったりして、「フィルム写真」の仕上がりに今なお根強い人気があることは間違いないと思う。
なんとなくなんだけど、音楽と似ていて、レコード聴くというようなもので、今となっては、知らない人が多いけど、好きな人はすごく好き、というような位置づけになってきているんじゃないだろうか。

でも、「フィルム写真」って一言で言っても、一体どんなイメージなんだろう。

 

PENTAX Q-S1 02STANDARDZOOM ISO100 f/3.2 1/640

PENTAX Q-S1 02STANDARDZOOM ISO100 f/3.2 1/640

 

「フィルムっぽい写真」としてよく言われるのは、粒子感があること、解像感がそれほど強くないこと、仕上がりの色合いの特徴(フィルムによって様々)の3つくらいなんじゃないかなぁ、と僕は思っている。

ただ、身も蓋もない話だけど、フィルム写真の一番楽しいところは、すぐに写りを確認できないことに象徴されるように、不便なところなのじゃないかと感じている。
だから、どうせならAFでなくてMFのカメラを使ってみたくなったりするし、連写もしない。1枚1枚、被写体と向き合いながらじっくり撮影せざるを得ない。
シャッターボタンを押せばそれなり写るというようなこともなく、カメラという機材を自分がしっかりと操作して撮らなければいけない。こういった写真を撮るプロセス自体が楽しいんじゃないだろうか。

男の人に多いかもしれないけど、機材をいじくって色々挑戦してみた結果、思ったようにできた時に感じる楽しさもある。機材を使いこなせるようになる、っていうのは単純に楽しいと思う。

撮るだけじゃない。自分が撮った写真を確認するまでに強制的に待たされてしまう。でも、そうして待っている間に色々考えている時間も楽しいし、ドキドキしながらプリントされた写真を一枚一枚見ていくことも楽しい。

フィルムを詰めて、最初に撮った写真を現像してプリントするまでに1ヶ月以上間が空くなんてことはよくあること。それくらいの間をあけて、改めて写真を見ると、その写真を撮った時の状況とか気持ちが改めて思い出される。その時を振り返りながら写真を見るのってなんだか楽しい。

 

こういう、「写り」以外の部分の楽しさというのがかなり大きいんじゃないだろうか。
待っている間に色々考え、想像していた内容と仕上がりの違いにいい意味で裏切られることがあるのはフィルムならでは。

記憶の中にある写真の写りとフィルムで撮った写真が何となく近く感じるからいいのかな、と思ったりもしたけれど、それはきっと個人的なものなんだろうなぁ。写真というものについて、デジタル写真のイメージを強く持っている人の場合は、こうは感じないだろうし。

ただ、あまりクッキリはっきりしていなくて、少し曖昧な雰囲気がある写真が僕は好きなんだろうと思う。

 

 

PENTAX K-3Ⅱ smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited ISO100 f/1.8 1/250

PENTAX K-3Ⅱ smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited ISO100 f/1.8 1/250

 

こんなタイトルで書いておきながら、正直なところどのような技術的な違いが、どの程度仕上がりに対する印象の違いに関係しているのかよく分からない。
単純にフィルムで感光するか、半導体で感光するかが違う、フィルムは斜めから入った光も受けらるものが多いけど、イメージセンサーの場合は垂直に入ってくることが望ましい、とか色々あるみたいだけど、そういう技術的な問題というのはそのうちクリアされて、デジタルでかつてのフィルムの質感を再現することができるようになるのは時間の問題なんじゃないかと思っている。

実際に、現時点でもプリントした写真を見ても、僕はデジタルで撮ったものかフィルムで撮ったものかすぐに分からないことがよくある。
特にL判とかでプリントしてあるのを見てもライトルームでフィルム写真っぽく仕上げるとちょっと分からないかもしれない。

 

どんどん便利になって、簡単に写真が撮れるようになった今、写真が消費されるスピードもどんどん加速しているように感じている人も多いんじゃないかなぁ…。

ボタンを押しただけで撮れた写真だからといって、すぐに忘れてしまってもいいのかなぁ。

ピントが合ってる、露出が合ってる、色合いが正しい、そういう写真を撮りたくて写真を撮ってるわけではないんじゃないだろうか。

どうして写真を撮るんだろう。昔の人が、高くて使いにくいカメラを使ってまで写真を撮ろうとしたのはなんでなんだろう。

自分は何がしたくて写真を撮っているんだろう。

 

写真を撮る、残すということについて、たまにはゆっくり考えを巡らしてみるのもいいかもしれないなぁ。

 

 

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